財務会計
財務会計とは、制度会計を全うし、企業活動を記録し、財務諸表を作成することを目的とする手段、あるいは考え方を指す。
概要 †
「いつ、どの勘定科目の、貸借どちらに、○○円の伝票を切る」という考え方や、仕訳を積み上げた結果をレポーティングするという流れは、一般的な会計の考え方と変わらない。
但し、SAP用語に置き換えると会社コードがxxで転記日付がyyyy/mm/ddで、転記キーが40で勘定コードは雑費、転記キーが50で勘定コードは現金・・・という風に、専門用語まみれだわ入力項目がやたらと多いわで、難解である。 しかしシステムは大抵そんなもんなので、覚えるしかない。
なお、財務会計分野で起こす仕訳の他に、ロジスティクス分野から販売活動・購買活動・荷動きetcによる自動仕訳により記帳される。
制度会計 †
さて、制度会計とはお国ごとにルールが違うわけであり、必然的に各国の国別要件や税要件を実現しなければならない。 SAPが素晴らしいところは、色々な国で使用することを前提としているため、それらの機能を事前に用意していたり、ソリューションの元ネタを用意していたり、SAP Noteによる法改正への対応が可能であることだ。
財務諸表 †
勘定コード表や勘定コード、事業領域、財務諸表バージョンや勘定グループ(マスタの方)などの整備さえすれば、B/S、P/L、C/Fなどは、SAP標準にバンドルされたものが利用できる。
補足として、レポートペインタやクエリのための年度別・期間別・貸借別勘定残高の自動記録*1や任意の切り口での勘定残高の自動記録などが実現の機構として存在する。
決算の早期化について †
導入業者の誰もが謳うが、なぜ早期化が実現できるのか?という疑問がある。 それを考えた時、すぐに思いつくのは、 →紙から電子になった結果、集計が楽になる。 →→また、更にその結果、人的ミスが減る。更にその結果、確認作業も減る。 →→→ワークロードが減る。
→SAPにはたくさんの機能がある。たくさんの切り口でのレポート出力もできる。 →→レガシーと比べて機能レベルが上がっている
→導入時に業務プロセスの見直しをするため、流れがAs-Isより洗練されることが多い →→プロセス自体が改善される
といったところだろうか。 つまり、業務改善が為されて、管理レベルや機能レベルが向上するからということが論拠と思われ、管理対象が減るのか?というと、これによって費やす時間が少なくなるだけであって、減りはしない。
逆に言えば、これらの要因を充足しない限りは、決算の早期化をはじめシステム化のメリットを享受することは難しいだろう。 更に言えば、これをちゃんと実施すれば、システム化のメリットは、十二分に受けることができると言っていい。
現実の会計 †
内容がシステムに寄りすぎるのもアレなので、企業会計原則でも。
真実性の原則 †
企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。
真実性の原則は、他の一般原則の上位に位置付けられる企業会計原則全般に共通する原則。
経理自由の原則という言葉があり、企業会計は企業自身がある程度の裁量で会計処理を選択する自由を認めているが、それはあくまで一般に公正妥当と認められる範囲でのことであって、この原則はその自由性に一定の限界があることを示している。
即ち、作成される会計報告は誰がやっても全く同じになるといった絶対的真実ではなく、ある程度の幅を持った相対的真実であるということができる。
正規の簿記の原則 †
企業会計は、すべての取引につき、正規の簿記の原則に従って、正確な会計帳簿を作成しなければならない。 企業会計は利害関係者に対して正確な財務諸表を開示するという目的を持つことから、正確な会計帳簿を実現するために、下記の要件を満たし正規の簿記の原則を遵守することを求めている。
- 網羅性 企業の経済活動のすべてが網羅的に記録されていること
- 立証性 会計記録が検証可能な証拠資料に基づいていること
- 秩序性 すべての会計記録が継続的・組織的に行われていること
これらを実現するためには一般的に、取引発生順の記録としての仕訳帳と勘定科目別記録である総勘定元帳の2つを複式簿記の原理に基づいて作成した結果として、誘導的に財務諸表の作成することであるとされている。
資本取引・損益取引区分の原則 †
資本取引と損益取引とを明瞭に区別し、特に資本剰余金と利益剰余金とを混同してはならない。
これは企業財務の健全性を保つために要請される原則で、タコ足配当や利益隠しといった不健全な経理操作を防ぐことで、企業の永続と発展を期待するものである。
資本取引とは資本の増減や転換を伴う取引*2であり、損益取引とは費用または収益を生じさせる取引(通常の企業活動)である。
資本取引から生じた資本剰余金と損益取引から生じた利益剰余金を明確に区別して、貸借対照表を作成する必要があるのである。
明瞭性の原則 †
企業会計は、財務諸表によって、利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、企業の状況に関する判断を誤らせないようにしなければならない。
企業会計は、企業の姿を映し出す鏡だとした場合、企業の真実の姿をできるだけ明瞭な形で反映するものでなければならない。
財務会計とは財務諸表によって出資者や債権者などの利害関係者の意思決定に資するために、企業の状況や会計事実を明瞭に開示することで説明責任を全うするためのものであるため、この明瞭性の原則は正確な帳簿の作成を求める正規の簿記の原則と相まって、正確な開示という企業会計の使命実現にとって極めて重要な意義を有している。
その使命実現のために、財務諸表自体を明瞭で分かりやすいものにすると同時に、附属明細表などをを利用して 必要な情報を補足しなければならない。
- 財務諸表での明瞭性の実現
- 総額での表示(総額主義)
- 費用と収益の対応表示
- 分かりやすい科目区分と配列による表示
- 財務諸表の注記、附属明細表による明瞭性の実現
- 重要な会計方針の開示(企業会計原則注解 注1−2)
- 重要な後発事象の開示(企業会計原則注解 注1−3))
- その他の重要事項の注記(企業会計原則注解 注1−4))
継続性の原則 †
企業会計は、その処理の原則及び手続を毎期継続して適用し、みだりにこれを変更してはならない。
経理自由の原則により、企業が業種や規模を勘案し最も適していると判断した会計原則や手続を採用することは一般に公正妥当と認められる限り自由である。 しかし、その採用した原則を毎期自由に変更することを認めると、利益操作を行う余地を与えたり期毎の比較を困難にする等の問題が生じるため、この原則は経理の首尾一貫性を担保するものである。
保守主義の原則 †
企業の財政に不利な影響を及ぼす可能性がある場合には、これに備えて適当に健全な会計処理をしなければならない。
損失は予想すれども利益は予想すべからずという思想はこの原則に立脚しており、貸倒引当金の手当や一部の資産に対して低価主義を採用して評価損を計上する一方、資産に対して原価主義を採用して評価益の計上を抑え、収益に対しては未実現利益の計上を抑えること等を指す。
これは、債権者の保護、配当や納税のための資金的裏付けのある利益を算出する必要があること、企業の経営維持の目的などのためである。
単一性の原則 †
株主総会提出のため、信用目的のため、租税目的のため等種々の目的のために異なる形式の財務諸表を作成する必要がある場合、それらの内容は、信頼しうる会計記録に基づいて作成されたものであって、政策の考慮のために事実の真実な表示をゆがめてはならない。
企業が会社内部で作成する会計帳簿は一つだけしか認めないとする原則で、いわゆる二重帳簿など不正な経理を戒めることを狙いとしている。
企業は財務諸表をさまざまな目的、例えば、商法の要請による株主総会提出のため、金融商品取引法(旧証取法)の要請による信用目的のため、納税申告のために作成するが、様々な形式を持つそれらの財務諸表の源はただ一つでなくてはいけない(実質一元・形式多元)とする原則である。
つまり、どのような会計帳簿も、日々の正確な会計記録から誘導的に作成されたものでなくてはならないのである。
構成 †
SAPの財務会計は、下記の機能により構成される。
- 一般的なもの 総勘定元帳(FI-GL) 債務管理(FI-AP) 債権管理(FI-AR) 固定資産管理(FI-AA) 従業員経費管理 特別目的元帳(FI-SL) 資金管理 FSCM(ファイナンシャルサプライチェーンマネジメント)
コンポーネントではないが、現実世界の会計である、インフレーション会計、売上原価会計、ジョイントベンチャ会計などの連携が用意されている。
まとめ前のメモ †
- 標準レポートのネーミングルール 頭二文字はRF、三文字目は勘定タイプとなっている。 RFKKVZ00(仕入先マスタ一覧)、RFDKVZ00(得意先マスタ一覧)、RFSKVZ00(勘定コード一覧)など。伝票系はBらしく、RFBELJ00(要約仕訳帳)。
まとめページ †
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